あきない世傳(せいでん) 金と銀 「仲間(なかま)」について

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江戸時代中期 大坂の商家の習慣について

商品の販売方法や食事にも習慣があった

NHK特選時代劇「あきない世傳(せいでん) 金と銀」とNHKBS時代劇「あきない世傳(せいでん) 金と銀 2」は、江戸時代中期、大坂の呉服商・五鈴屋を舞台として、女主人の幸(小芝風花)が活躍するドラマです。

そのためこれまでも当時の大坂における商家の習慣について紹介してきました。

今回の記事では、さまざまな商家の習慣のうち、「仲間(なかま)」についてご紹介をします。

江戸時代の「仲間」とは?

中世の「座」を踏襲した江戸時代の「仲間」

現代の日本語で「仲間」と言えば、「友だち」や「フレンド」のことを表します。しかし江戸時代の商人を語る文脈での「仲間」という言葉は、「友だち」という意味ではなく、「商工業者の組合」という意味になります。

江戸時代の「仲間」はすでに戦国時代から存在し、やはり「商工業者の組合」であった「座」を踏襲したものであり、価格・商品の販売方法・販売地域などの商売に関わる重要事項を組合の内部で決めていました。

現代風にいうと江戸時代の「仲間」はカルテルであると言えるでしょう。

自治組織としての「仲間」

ただし戦国時代の「座」から発達した「仲間」は、江戸時代の半ばまではあくまでも一種の自治組織であり、時の権力者はその同業者組合の存在を「尊重する」という立場でした。

小説版「あきない世傳(せいでん) 金と銀」の「源流篇」・「(二)早瀬篇」・「(三)奔流篇」は西暦にして1730年から1740年代のお話であるため、物語で登場する「仲間」とは一種の自治組織です。

江戸幕府の出先機関で大坂の民政を担当する大坂町奉行所も、呉服商仲間内で決めた取り決めについてはほとんど介入しません。

むしろ江戸の呉服商が大坂に初めて「店前現銀売り」の販売方法を持ち込もうとしたとき、大坂町奉行所の方から呉服仲間に対して、組合はこの販売方法を認めるか否かという照会があったほどです。

仲間の変質 自治組織から幕府の認可団体へ

享保の改革から田沼意次の時代に変容する「仲間」

18世紀の前半までは「自治組織」という性格が強かった「仲間」ですが、小説版「あきない世傳(せいでん) 金と銀」の「源流篇」・「(二)早瀬篇」・「(三)奔流篇」の時期は「享保の改革」の時期に相当し、この頃から自治組織の性格が少しずつ変わり始めます。

江戸幕府の八代将軍・徳川吉宗は「享保の改革」により商業を統制した方が良いという考えの下、「仲間」を認可制にし始めました。「仲間」は冥加金という税を納める代わりに、販売権の独占を公許するという方針に変わり始めます。

さらに「享保の改革」ののちに登場する老中・田沼意次が財政を担当しているときは、幕府の税収増を狙って「仲間」が積極的に公許されるようになりました。

御免株(ごめんかぶ)と願株(ねがいかぶ)

徳川吉宗が「享保の改革」で取り入れて、田沼意次が積極的に奨励した「仲間」はすべてが幕府によって結成が命じられていたとは限りませんでした。

例えば2025年NHK大河ドラマ「べらぼう」の重要なアイテムである「本」を例に取ってみましょう。

漢籍や医学・薬学・辞典などのいわゆる「かたい本」を扱う書物問屋(しょもつどんや)は幕府によって公許された仲間ですが、錦絵本・草双紙・吉原細見など今でいう雑誌のような「かるい本」を扱う地本問屋(じほんどんや)は公許された仲間ではありませんでした。

  • 書物問屋 → 公許された仲間(御免株)
  • 地本問屋 → 自主的に結成された仲間(願株)

書物問屋のような幕府公許の仲間のことは「御免株(ごめんかぶ)」と呼ばれ、地本問屋のような自主的に結成された仲間のことを「願株(ねがいかぶ)」と呼ばれました。

大坂天満の呉服仲間は幕府に公許されていたのか?

それでは小説版・ドラマ版「あきない世傳(せいでん) 金と銀」に共通して登場する五鈴屋が所属する大坂天満の呉服仲間は御免株・願株のどちらだった考えられるでしょうか?

残念ながらこの組合が幕府によって公許されていたかという記述は見つかりません。もし物語に登場する大坂天満の呉服仲間が公許されたものであれば、幕府に冥加金を納めるという描写があっても良さそうです。

しかし小説版「あきない世傳(せいでん) 金と銀」の「源流篇」・「(二)早瀬篇」・「(三)奔流篇」を読む限り、仲間が冥加金を納めるという描写はありません。

幕府が介入しても強固な自治組織であった「仲間」

ただ大坂天満の呉服仲間が幕府から公許されなかった団体であったとしても、依然として自治組織としての仲間はかなり強固な存在であったことには違いありません。

「あきない世傳(せいでん) 金と銀」では仲間の中で了承を取れなければ、後継も決めることもできなければ、一日限りの店前現銀売り(誓文払い)もできないことが描かれています。

著:髙田 郁
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